東京地方裁判所 昭和44年(ワ)2693号 判決 1969年5月31日
原告 内藤千枝子
被告 アート工業株式会社
右代表者代表取締役 鈴木通之
主文
被告は、金一八六、七九〇円とこれに対する昭和四三年一〇月二一日から支払ずみまで年五分の割合による金員を、原告に支払え。
訴訟費用は、被告の負担とする。
この判決は、仮りに執行することができる。
事実及び理由
原告は、主文同旨の判決を求め、その請求原因として、次のとおり述べた。
「原告は、昭和三四年一一月三日被告会社に雇われ、昭和四三年七月二〇日退社した。
被告会社の退職金規定によれば、被告会社は、原告に対して金一八六、七九〇円を同年一〇月二〇日までに支払うべき義務がある。よって、原告は、右金員とこれに対する昭和四三年一〇月二一日から支払ずみまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。」
被告は、請求棄却・訴訟費用原告負担の判決を求めたが、答弁としては、原告主張の請求原因事実を認め、ただ「被告会社は、昭和四三年八月二七日東京地方裁判所において和議開始前の保全処分の決定を受け、一切の支払を中止されているので、和議手続が確定するまで支払の延期を求める。」と付陳した。
ところで、和議開始前の保全処分が発せられたということだけでは、裁判上、支払を拒絶できる理由とはならないものであるから、原告の本訴請求は、全部正当として認容すべきである。
よって、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八九条を、仮執行の宣言について同法第一九六条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 吉永順作)